(17’GCC) GAME CREATORS CONFERENCE 2017に行ってきました – その1
はじめに
グランキューブ大阪に2017年2月18日に開催されました「ゲームクリエイターズカンファレンス 2017」(以下GCC)に行ってきました。
現在のキャリアの殆どをWeb畑で過ごした私としては、ゲームディベロッパー・コンシューマーゲーム開発者のみなさんとの交流はとても新鮮で刺激的なものでした。
講演内容も素晴らしいものが多く、大変学びの多かった勉強会となりましたが、
今回私が受けた公演と、その内容を少し紹介して行きたいと思います。
なお、思ったよりもボリュームが出てしまったので、小分けにまとめていこうと思います。
いずれもスライドは後から公開されると仰ってましたので、ご興味を持たれましたら、
是非スライドの方もご確認頂けますと幸いです。
GCCとは
http://gc-conf.com/
・ゲーム業界の大規模勉強会を行うこと。
・関西のゲームに関わる各種団体等を結ぶハブとなること。
・ゲーム・情報処理・美術系等の教育機関との賛同を頂き、関西での産学連携の土台となること。
を目標とした関西におけるゲームクリエイター向けの大規模勉強会
受講したセッション
- 10:30-11:20:オール・アバウト・バイオハザード7
- 11:30-12:20:ラピッドイテレーションを実現するRE ENGINEの設計
- 14:00-14:50:光と質感の基礎知識
- 15:00-15:50:ファイナルファンタジー15の世界を作るグラフィックス(背景/VFX)
- 16:30-17:20:グランブルーファンタジー『Project Re:LINK』におけるリアルタイム雲表現の研究と技術紹介!
- 17:20-18:30:Nintendo Switchにおけるタイトル開発
~プラットフォーマーとサードパーティーの二人三脚の取り組みについて~
オール・アバウト・バイオハザード7
株式会社カプコン 中西様
ビッグヒットタイトルであるバイオハザード。
その7作目において、大幅な方向性の展開と原点回帰のお話。
より恐怖にフォーカスし、「バイオ」のブランドを取りもどす
・プロダクトビジョン
- ホラーで行く
- イメージはEvil DEAD
-> 登場人物は5人だけ。小さな廃屋が部隊
-> 世界を広げるのではなく、狭く深く - ・イメージの一新
-> フォトリアル
-> 主観視点 - ・ホラー体験への集中
-> シングルプレイ
ビジョンの方向性は社内でも議論があった。
そもそもバイオハザードってどんなゲーム?
- ゾンビを倒すのが楽しい、爽快。
これってバイオが目指す姿と違うよね?
でも実際はシリーズが進むごとにこっちに寄ってきていた。 - めっちゃ怖い、でもめっちゃおもろい
初めてプレイした時の恐怖
初代バイオのインパクトをもう一度出す
初代バイオの体験
- よくわからない洋館に閉じ込められる
- ゾンビが何故かいるけど、何故存在しているのかわからない
- クリスもどんな人かわからない
- 生き残れるかわからない
- 早く外に脱出したい
“わからないこと”が不安を煽り、恐怖を生んでいていた。
バイオ7ではどのようにしたか
- 館モノ
弾薬を集め、謎をとき、道を切り開く
-> メトロイドヴェニア型 - 死霊
-> 知性、表情豊か、心理的にキツイ
-> なにをしてくるかわからないやつ - 一家
-> 登場人物を4~5人に絞る -> 家族構成にする
ホラーの課題
人は恐怖にすぐ慣れる
恐怖に対応できる手段 = 敵を倒せる = 恐怖が打破される
対象が「未知」から「対応可能な存在」となると怖くなくなる
ただし、バイオの面白さの一つに「敵を撃破してカタルシスを得る」というものがあり、
ホラーとバイオとしての面白さの共存にジレンマを抱えていた。
↓
家族(登場キャラ)それぞれに、違うホラーテーマを用意する事で
新鮮なホラー体験を提供する。
恐怖の質を上げる
没入感 (自分がそこにいて、体験しているという感覚)を出す
- 主観視点
- フォトリアル
- ビリーバビリティ(身近にありそう)
- 控えめな主人公 -> プレイヤーより前に出ない
- VR
その結果、今回は入らなかった要素
- おなじみのキャラクター
- アクション
- COOP
- ゾンビ トリガーハッピー
- ブロックバスター
20年の歴史と様々なファン
- キャラが好き
- ストーリーが好き
- 怖いのが好き
- COOPで敵を倒しまくるのが好き
- 謎解きが好き
- ゾンビやクリーチャーが好き
- 固定カメラが好き
様々な意見、要望がある
↓
誰からも嫌われない様にすると、誰からも好かれないものが仕上がる
↓
ビジョンの達成の為に「何をやらないか」をキチンと決める
チームのマインドセット
怖いゲームを作る!という意識を高める
- ホラー映画を見る
- お化け屋敷に行く
- 心霊スポットをめぐる
こういうイベントをやる。
(嫌いなスタッフも居たが……)
開発者が”怖い”体験をちゃんとしないと、ユーザーへ怖い体験は提供出来ない
バイオは栄光を取り戻せるのか?
原点回帰を言わずにユーザーに伝える。(例バットマン)
ただホラーだけではだめ
ピュアホラーではない、バイオのおもしろさ、
「旨味成分」がちゃんと必要。
「良いものを作れば、結果はついてくる」
by CAPCOM会長
プロトタイプ期間のチーム運営
- Unityでのプロトタイプ開発
- 仕様書は”書かない”、または最低限
- 面白いと思ったら実装してみる
- やりたい人が、やる・できるポジションに配置
- セクションの撤廃
-> ゲーム全体を良くすることに持つべきで、自分の仕事領域以外に興味がないのは良くない - アジャイルを採用
- 小さい単位でグループ分けする
- ゴールを定め、裁量を与える
-> チーム内にインディーデベロッパーが複数存在するような形にしたかった - 作っている物単位でのチーム分け
・父チーム
・母チーム
・兄チーム
・祖母とその他チーム…等チームの底上げが狙い。
・作っているものを「自分のもの」と感じ、愛着を持ってもらいたい
・チームに勢いが出る
マイナスポイント
- 迷走 / 混乱する
- チーム運営のやり方が向いている人、向いていない人が出てくる
- 成果物の個々は面白いが、全体としてチグハグになる
- というかカオス
勢いって大事
本開発プロセス
RE ENGINE というカプコン内製の次世代ゲームエンジンを使用
(RE ENGINEについては次のセッションにて)
- これまでよりも短い開発サイクル
- これまでよりも少ない人的リソース
- これまでよりも大量のアセット
- これまでよりも高品質なフォトリアル
一見すると不可能な要望。CEDECで話した後は「カプコンはブラック企業では」という話まで…
しかし、サイクルの早いゲーム業界で、停滞することは死ぬ事を意味する。
常にこういう意識でいないと駄目。
やれない事を説明するのではなく、どうやったらやれるのかを考える
↓
思考停止したら終わり
制約がアイデアを生む
ゲームはトンチで出来ている
前向きに考え、思考停止しない
セオリーを無視する
開発者は怖いのか?
最初はやっぱり怖い
しかしプレイし続けるとだんだん慣れてくる
恐怖に麻痺してくる
段々と、これでほんとに良いのか心配になる。
余計な修正を入れていまう
↓
頻繁にユーザーテストを行い、怖いかどうかは客観的に確認する
ユーザーテストは重要
- 緊張と弛緩のペース配分
- ストレスを与える時間
- 枯渇感とアイテム入手のタイミング
- ユーザーへの目的意識の与え方
グランブルーファンタジー『Project Re:LINK』におけるリアルタイム雲表現の研究と技術紹介
大阪Cygames
2015年4月1日
グランフロント大阪
ハイエンドゲームの開発
グランブルーファンタジー『Project Re:LINK』(以下Re:LINK
PS4 2018年発売予定
開発はプラチナゲームス
大阪Cygamesは絵(クリエイティブ)の部分を担当
グラブルの世界の雲を表現するための研究開発を進める
原作のグラブルの雲がどのように描かれているか。背景を書いてる方と協力。
原作のグラブルの雲のポリシー
- どこまでも広がる壮大かつ繊細で、気持ちのよい空の世界を演出する
- ファンタジーらしく不思議な形から、誰もが理解できる入道雲などを組み合わせる
- 雲と空の形。デザイン。丸みの帯びた雲と、尖った不思議な雲
- 雲が雲に突き刺さるような表現。
- 普通の雲のうえにファンタジーの雲を重ねる
- フォトリアルな空気遠近法を基本としつつ、イラストを書いている。
- 影の中にもしっかりとした色を交えて色表現を行う。
- 雲と空だけの処理で考えるのではなく、同じ環境にあるもとしてみえるようにする。
- 他の環境物と合わさって雲が描かれる。
- 雲と建造物が馴染む。どこからが雲でどこからが大地なのかわからくなるような表現を大事にする。
これらのことをふまえ、グラブルの空の世界を3Dで描く。
Re:LINKにおける、雲表現の研究紹介
雲表現。
眼科にどこまでも広がる雲表現が必要
どこまでも広がる雲とは?
↓
無限平面化に雲を充填して表現
「平面雲」と名称
潜ることが可能な雲。何故潜る必要がある
飛空艇が雲の中にはいったりすることがある
平面雲の実装に必要な知識
- そもそも雲とは?
- 平面雲を形作る方法
- 光学法則
- レイマーチ
1.そもそもくもとは
液体もしくは個体。気体ではない。
- わたぐも -> 水滴。
- 飛行機雲 -> 排気ガス中の水蒸気が水滴や氷晶になったもの。
- 雲は、水滴、もしくは氷晶のあつまり。
2.平面雲を形作る方法
雲を形作る方法はいくつか存在する。
その中でも手続き型(プロシージャル)を採用
the Real-time Volumetric Noise Texture
通常のNoise textureに奥行きが増えたノイズテクスチャ
Noiseアルゴリズムの紹介
Berlin Noise
Ken Perlin氏が開発したノイズ
きれいな雲模様を生成する事が可能
Workers Noise
Steven Worley氏が開発したノイズ
水面がキラキラ反射しあような模様
もこもことした膨らみを持つ模様
組み合わせてPerlin-Workey Noiseを作る。
平面雲を形作る方法は
Perlin-Workey Volumetric Noise Texture
をつかう
3.光学法則
雲のライティングを行うために、光が雲をつうかしたさいの事象をシュミレートする
雲に対する光学法則はすべて液体に関する法則。雲もまた液体である。
ランベルトの法則
光が物質を通過する場合、吸光度は通過した光路長に比例する
吸光度 = 光の減衰割合
吸光度 = 吸光係数 * 光路長
ベールの法則
光が物質を通過する場合、吸光度は物質のモル濃度に比例する
モルとは濃度の単位(長さで言うメートル的な)
吸光度 = 吸光係数 × モル濃度
吸光係数とモル濃度の違い
・吸光係数: 物質固有の係数
・モル濃度: 環境によって変わる
ランベルト・ベールの法則
ランベルトの法則とベールの法則を組み合わせたもの。
吸光度 = 吸光係数 * 濃度 * 光路長
雲をライティングするためには
密度と(濃度)
雲の厚さ(光路長)
が必要になる
4.レイマーチ
雲は大気中に浮かぶ液体であり、濃度は一定ではない。
レイマーチにおける測定が必要である
レイマーチとは
レイトレースの一種
レイをすこしずつ進めながら処理を行う、
ステップによる、反復処理の事をレイマーチとよぶ
ステップの反復処理を呼ぶ、その回数をステップ数という
雲の形を決定 -> 密度が0なら存在しない
雲のライティングを決定 -> モル濃度を測定
高速化手法
レイマーチは負荷の高い処理なので、
高速化が必要になる
基本高速化手法
- レイマーチの省略
- ステップの早期終了
- ステップ回数の削減
-> 確実にレイが衝突しない場合は、そもそもレイマーチを省略。 - ステップの早期終了
->密度量が十分な場合は、ステップを早期に終了する事は可能
(なぜならばそれ以上密度が上がってもライティングの結果がかわらない) - ステップ幅を拡大する事でステップ数を削減
-> ただし、測定結果の不定格さがあがるので注意。
高速化は必須。
おさらい
- どこまでも広がる雲
- 潜れる雲
- 雲は液体である
- Perlin-Workey Volumetric Noise Textureで形作ってます
- ランベルトベールの法則でライティングしてます
- レイマーチで雲密度を測定しています。
弱点
入道雲の表現が出来ない!
入道雲は形に個性があり、
Noiseのようなテクスチャーで機会的に生成することが難しい
任意形状雲の研究が必須に
任意形状雲
- ボリュームのある雲が表現できて
- 形は簡単に変更可能で
- カメラが雲の中に入ることができる
(入道雲など)
現在研究中のため、現在の手法の紹介であり最適解の紹介ではない。
雲ととして形作るために、球体を結合させて作成
- ・処理が単純かつ高速
- ・雲の形を作りやすい
最初の研究では
3Dテクスチャで形状を格納
レイマーチで描画
平面雲と見た目に差異
拡縮などに弱い(テクスチャなので)
↓
不採用
雲の描画
- 空間にみえない雲を充満
- 雲を表現したい場所に球体を定義
- 球体内のみ密度を収集して描画
- ライティングには平面雲と同じ
-> 同じにすることで、並べた時に見た目に差異が出ないように - 視線方向に複数の雲が重なる
- 雲同士で影を落とす
といった内容の考慮が必要
視線方向に描画する雲の球体をリストアップ
視点に衝突しない雲は描画しない
視線方向に重ねるとある行って以上で不透明になるので、
その時点で終了(レイマーチの早期終了)
※必要最低限の雲だけを描画する
ライト方向へも複数の雲を考慮する
(ライトの光を遮る雲)
その雲を考慮して陰影をつける。
雲の動的結合も可能。
ノイズでマスクしているので、違和感なく結合可能。
様々な形状を表現可能。
今後の課題
レイマーチなど処理が重いものをつかっているので高速化対応が必要
もっともっとグラブルっぽい表現を表現
雲だけでなく、他の物質との共存
まだ開発して2か月なのでこれからもっとよくなる
グランブルーファンタジーの美しい世界を完全再現できるように頑張る。
最高のコンテンツを作る会社にします!
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